目が覚めたとき、部屋には陽の光がうっすらとさしこんでいた。寝起きは良い方ではないから、しばしぼうっとした。
最初に、温かくて柔らかいものを抱きしめてることに気づく。なんだろうと確認するために顔を動かして、蒼牙はぴしっと固まった。
あやうく叫びそうになるのを抑えて、ああそうかとほうっと息をついた。
「…ん…」
長い睫毛にふしどられた瞼はぴっちりと閉じられていて、頬をつついても起きないところを見るとちょっとやそっとのことじゃ起きそうにないくらい深く眠っているようだ。
「…がっつきすぎた…」
ごつんと自分の頭を殴る。一回だけで満たされた気持ちになったにも関わらず、桜の言葉にあっけなく陥落する所あたり、まだまだガキだと思う。
一度目よりも…そうとう激しく求めたから、自分が果てると同時に、桜は疲れて気を失うように眠ってしまった。
けれどこのままじゃ風邪をひいてしまうだろうということで、女の式紙―螢火を呼んで(その式紙から聞いたところ、浅燈はわざわざ一番離れた厩で寝ているようだ)、桜の世話を頼んだ。
自分も湯殿で身体を清めて帰ってくると、新しく敷き直された褥の上で、桜は夜着をまとってやはりくうくうと眠っていた。螢火によると、湯殿で身体を清めるために手を貸している時も、ほとんどは眠っているような状態だったという。
小さなころから一度眠ってしまうとなかなか起きないところは変わらない。
頬を撫でても、髪をすいても、細い手首にそっと口付けても起きない。
ふいに桜が寝がえりをうつ。蒼牙の腕が緩んでいたので、そのまま寝台から落ちそうになった。
「…あぶなっ…」
慌てて腰を引き寄せて、顔をのぞく。………起きない。蒼牙は嘆息した。
風早と白雪に飼葉でも食べさせてくるか、と寝床から出ようとしたとき、桜の小さな手が蒼牙の袂を引っ張った。
「…?」
「…そ…が…く…」
力はそんなに強くなかったので、すぐに手は外れたが、蒼牙は複雑そうな表情を浮かべた。
昨日、肌を合わせている最中、桜が一所懸命に自分に応えているとき、彼女はずっと夢を見ている、と言った。
毎日、毎日蒼牙の夢を見て、目覚めたときに蒼牙がいないことに絶望して嘆いて、うちひしがれたと。
夢が覚めなければどんなにいいかと、幾度も思ったこと。
こうしていても、ふっとこの瞬間が融けて消えてしまうのではと怖くてたまらない。
そう言って、脅えていた。
いま自分が出て行って、眼が覚めたときにひとりだったたら、泣いてしまうだろうか。
昨夜のことを泡沫だと思ってしまうだろうか。
蒼牙は眉をひそめた。なぜだか桜が幸せそうに寝ていれば寝ているほど、胸がざわざわと落ち着かない。
夢なんかじゃない。本当に、結ばれた。
「…ふ…?」
蒼牙の不穏な空気を察したのか偶然か、桜の睫毛が震えて濡れた琥珀の瞳がぼんやりと現れる。
とろん、としている様子から、まだ半分寝ているんだろう。それでも、蒼牙の顔を見ると、嬉しそうに顔をほころばせた。
心の底から愛おしさが募り、気づいた時には再び瞼を閉じた桜の唇に自分のそれを重ねていた。静かな寝息をたてる柔らかな唇を軽くふさいで、した唇を吸う。
「ん…?」
小さな声が漏れるが、起きる様子はない。浅く閉じた桜色の唇を舌で舐めるように割ると、簡単に歯列の隙間ができる。
ゆっくりと舌を動かせて小さな舌を探し出し、吸い上げるように舌を絡めた。すると、桜がわずかな反応を見せる。
「…っ…ふ…」
とろんと琥珀の瞳が現れる。だが、焦点がはっきりしていないから、半分以上は眠っているだろう。
そっと緩んだ白い夜着の袷をひらく。すると朝の薄い光の中に白い肌が浮かび上がる。真っ白な雪のような肌に、赤い花が咲いている。首筋から鎖骨、膨らんだやわらかな胸。
その数の多さに、どれだけ自分が彼女に夢中になっていたかがわかり、苦笑が漏れる。
あらためてその痕を指や唇で優しくたどる。
少し強めに吸えば、桜の肩がぴくりとふるえる。
「…っ…? そ…がくん?」
まだ頭にもやがかかっているのか、ぼんやりとした声で桜が蒼牙を呼んだ。
ぽうっと自分を見上げているその表情が可愛くて、口をふさぐ。なるべく驚かせないようにゆっくりと口内を甘く吸う。
「っぅ、ん…っ」
鼻から抜けるような甘い声と、ゆめまぼろしの続きだとでも思っているのだろうか、嬉しそうに細められた濡れた琥珀の瞳に、片隅に残っていた理性の糸がぷつんときれて、がらがらと崩壊していく。
「……ごめん。とまんない」
柔らかくて細い身体を抱き寄せて、首筋から耳たぶまでゆっくりと唇をはわせる。
手のひらで柔らかな乳房を撫でると、桜は細い声をたてて背中を弓なりにのけぞらせた。
とくとくとく、と段々彼女の心臓の鼓動が速くなっていく。
「ぁっ、…んんっ」
昨夜見つけた敏感な場所を撫でれば甘い声が零れて、細い腕が背中に回った。
鎖骨から唇を離して、深い口づけを交わす。たどたどしく応える様子がいじらしくて、何度も何度も角度を変えて口付けた。
ありがとうございますっ涙
うん、綺麗だった
ひゃああ///