こちらにも更新~。
ゆっきーとあっきー。
差し出された手のひらをきょんと見つめる。
それからすぐに微笑んだ。
「そうね。じゃあエスコートして貰おうかしら」
そっと手を重ねる。流れるような所作で絡まったそれ。緩く触れあう感触がくすぐったい。
さく、とサンダルが砂に沈む。雪路は半歩前でゆったりと歩みを進める。
特に会話するでもなく、寄せる潮騒に耳を傾けた。
見送ってくれた友人たちは少し驚いた顔をしていた。
雪路の行動に驚いたのか、自分が素直な態度であったからか。どちらにせよ日常じゃお目にかかれない光景だったからだろう。
円だけが、痛みを孕んだ表情で二人をみていたけれど。
雪路がふいに私を連れ出すことは、実は珍しいことじゃない。
仲間の中では舌戦をくりかえす傍ら、二人の時はもともと言葉を交わすことが少なかった。皆無と言ってもいい。
そこにただ手をつないで歩くことが加わったのはいつからだろうか。もう覚えていない。
弟たちのはしゃぐ声が遠のいて、やがて気付いたときには影さえ見えなくなっていた。
そうそう先程の同僚の顔ったら。
「…なにを笑っているんだ」
「さっきの漣の顔よ。ぽかんとしちゃって」
いつもと違う格好をしているだけ。
それを特別に感じないのは、常にありのままの彼女を愛おしいと思っているからで。
でもそこにも気付いていない彼の心底不思議そうな顔がなんだか童のようだった。
ふうと雪路がため息をつく。
「……あきらは……、はいらなくていいのかい?」
戸惑いと、申し訳なさが入り混じった声に、あきらは静かに首を振る。
「あたし、日焼けすると火傷みたいになっちゃうから」
いいのよ。と続けると、そうかと返ってきた。
うん。と囁いてまた静寂が流れる。
いつのまにか歩みは止まっていた。
歩き出すでもなく、並んでぼんやり海を見つめる。
ざざ、ざざ、と波が寄せる。
この海に思い入れがあるわけではないけれど、吸い込まれそうな青に強い懐かしさを感じた。
ひとは、海から生まれて、海に還る。
きっと自分もそう。
きらきらと陽をうけて輝く水面から碧くうねる水底。そのすべてに溶か されて、魂が混じり合う。
少し、羨ましい。
そうなれたら、身体なんてなかったら全てでくるんであげられる。
くい、と手が引かれた。
思考が飛んでいたため、ほんの少し均衡が崩れる。肩に回された手のおかげで転ぶことはなかったけれども。
ふうわりと、頭のてっぺんに柔らかいものが触れた。
「……くすぐったいよ」
「…うん」
離れる直前におでこかさついた唇がかすめた。
わざと軽く笑ってみせる。合わさった濡れ羽色の瞳にうつった自分の顔が揺れた。
--泣かないで。
――泣いてない。
それならいいのと笑えば、淡い笑みが返ってくる。
戻ろうと言ったのはひとしきり浜辺を散策した後。
小さなお土産も貰った。
アイスでも買っていこうかと遠回りを提案したのは雪路のほう。
そうねと頷いて歩き出す。
少しでもこの時間が続いてほしいと小さく願ったのは、きっと両方。
fin.