「チェックメイト。僕の勝ち」
「うーーーーっ」
「エルー弱くなった?」
エドモンドはそう言って笑みを浮かべる。柔らかい青の髪に銀の瞳。女性的な印象が強い華やかな顔立ちの麗しさはクラウス侯爵家の特徴だ。下手したらそこらの女性なんかよりずっと美人。
その笑顔がなんだか気に入らなくて、エルザはぷうっと頬を膨らませる。
「ここのところやってなかっただけよっ」
「またおとぎ話に没頭してたの?」
くすくすと軽やかに笑いながらエドモンドはチェス盤を片づけた。エルザは頬を膨らませたままそっぽをむく。
「おあいにく様。〝くりすます〟について調べてたの。パーティーに誘われたでしょう? どんなものか知っておきたくて」
「そうなんだ。偉いな」
そういって婚約者はやわらかく笑う。反則だ。そんな優しい声で言われてしまえればどんなことも許してしまう気分になりそうになる。小さなころは泣き虫でひょろひょろしていたのに、数年会わない間に背はすらりと高くなり、声も低くなって、文句なしの好青年になってしまった。
ずるいと彼に言えばお互い様だと返される。よく意味が分からなくて、いつも後ろに居るパールだけが状況を全部把握してにこにこ笑ってるのだ。
「それで? なにかおもしろいことがわかったの。エルー」
「えーっとね、サンタクロースっていうおじいさんが、眠っている間にプレゼントを置いて行ってくれるらしいわ。イドラに来るのかしら」
そうしたらぜひ会ってみたいわっと意気込むエルザの姿に、しばしエドモンドはどう返したものか言葉に詰まった。だが、すぐに麗しい微笑みを浮かべる。
「プレゼントを貰えるのは、子どもだけじゃなかった?」
「…そういえばそうかいてあったけど…、でも、っ」
言葉をつむごうとした唇がふさがれる。そのままふわり、と背中に腕を回されて、そのままソファーに押し倒された。
エルザは顔を真っ赤にさせて口を手で覆う。
「なっ、な…っ」
「エルザは子どもではないだろ? だってさ…」
耳元で甘くささやかれた言葉に、エルザはうなじまで赤くして恨めしげにエドモンドを見上げた。
「……どいて」
「どうして?」
「イドラにいく支度するのっ」
叫ぶようにいうと、エドモンドはすんなりエルザの上からどいた。どっくんどっくんと暴れている心臓をもてあましながらエルザも起き上がる。
なんだかあの婿選びの日から今日までエドモンドに振り回されっぱなしだ。
せめてクリスマスの時は、エドモンドをびっくりさせていままでのぶんを挽回させてやるんだから。
エルザは固い決心を胸に抱いて遠くにいる友人たちをおもった。
fin.