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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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 その姫君は、
 私達の宝物。

 + + + + + + + + + +

「巫女姫さまにクロキアから降嫁のお話が来てるって本当か?」
「馬鹿だねあんた。めったなこというんじゃないよ。そんなことあるもんかい」
「だけど内裏の門番に聞いたんだ。確かな情報だよ」
「あたしも聞いたわ。帝はどうなさるおつもりかしらねえ…」

 九重はみたらし団子をほおばりながら、長屋の前の井戸で、道の途中で足をとめてこそこそと話をしている市民の声に耳をそば立てた。
 
「おっちゃん、団子追加ーっ」
「あいよー。九朗、おめえしばらく顔見せてなかったな。どこいってたんだ?」
 九重は瞬きをしてから、さらりと応えた。
「伽羅」
「ッ! おいおいそれじゃあ、巫女姫さまが降嫁なさるっつーのは本当なんか?」
 伽羅とはクロキアの古い国名だ。団子屋の店主はその言葉に興味心身な様子で声をひそめて聞いてきた。
「んー。クロキアが散々要求してるのは確かだよ」
 空の串をもごもごと動かしながら応える。いつのまにかまわりにわらわらと人が集まっていた。
「もちろん、帝は断るよなあ」
「だがよお、それでクロキアが怒ったら戦になるんじゃねえか?」
「おいっめったなこというなっ」
「……」
 それとなく市内にうわさを流すよう部下に伝えておいた。町人の反応は、まあ予想とあまり変わりない。
「巫女姫さまは断らないよ」
 ざわざわとした喧噪の中、妙にひびく声が届く。それは九重が座っていた長椅子の隣。九重とは背中あわせになるように座っている少年がくすくすと笑いながらこちらをみていた。
「断ったら戦になるんだったら、賢い巫女姫さまのこと。断るわけない。シュアラは安全さ」
 ゆっくりと言い含めるような口調に、九重はお茶を飲みながら、眉をしかめた。明らかに町人たちが動揺したのが伝わってくる。
 戦か。降嫁か。
 数秒後には団子屋は激論の場と化していた。九重は少年をみるべくもう一度振り向いた、が。

(………いない…)

 舌打ちをして、赤い敷き布が引かれた長椅子の上に駄賃を払い、路に出る。今の九重の姿は腰に二本差し。武家の若者の格好だ。この姿の際には〝柊 九朗〟と名乗り、隠れ蓑もちゃんと用意してある。
 七十歩ほど大股に賑やかな大路を突き進む。それから懐に手を入れて、「しゃらめ」の暖簾を下げる小間物屋に入った。
 店の中でを見回して、くすっと笑う。品物の手入れをしている店娘はこちらに気づかぬ様子だ。

「深雨(みう)」
「? …あら、九朗さま。ほんとうにお久しぶりですこと。都のことなど、お忘れになったのかと思いましたわ」
 棚を整理しながら、深雨はつんとした様子で声を返した。九重はくすくすと笑いながら、我が物顔で店の奥に入り、座敷に腰を下ろす。
「それ厭味? 私だって忙しいんだよ」
「あら、先日ご同僚の新様と遊里に行ったって時雨さまから聞いたけれど…」
「耳が痛いな。旦那さん、深雨さんをお部屋に連れて行って言い訳を聞いていただいてもらっていいですか?」
 番台で煙管をふいていた初老の男性が苦笑する。
「ああ、柊さんがいなくってだいぶすねていたから慰めてくれ」
「お父さん!」
 顔を真っ赤にする深雨の手をひいて、九重は座敷を上がり、階段に向かった。部屋は二階にある。が、九重と深雨は階段の裏にまわる。
 一見、床下には何もないように見えるが、深雨が床の板を一枚とると、かたりと音を立てて床の一部分がくぼむ。
 足で押すと、ひんやりとした空気が頬を撫でた。鉄の梯子が地下につながっている。初めに九重が。次に深雨が身軽にその中に飛び込んだ。

◇ ◇


「…で、隊長。いつまでこの設定で行くんですか」
「深雨、私は隊長じゃないよ」
 薄暗い地下牢の中、室内を明るくするために、丸行燈に灯りを灯しながら九重が返す。深雨―時雨はため息をついてから可愛らしい声を出した。
「…九朗さん」
「よしよし。可愛い。ど? そっちの市井捜査」
「…九朗さんのおっしゃるとおり、皆姫宮さまの降嫁がどうなるのかが気になっているみたいです。…ただ、ちょっと気になることが」
 かんざしを一本外して指先で遊ばせながら、時雨が言う。九重は首を傾けた。
「気になること?」
「内裏付き隠密じゃない…忍びが動いているみたいです」
「陽炎かな」
「それはわかりませんが。…町人を揺動させるようなうわさを蒔いてるみたいなんですよね」
「……私もさっき団子屋でそれっぽいのみた。……大公かな」
「おそらく」
「……大臣たちが駄目だって知ったら町人か。清閃隊とは連絡取ってる?」
 市中警護、市井安全、捕縛を仕事としている清閃隊は武家町人関係なく腕の立つ者がよりあつまっている。
 時雨は深雨として清閃隊に協力しているのだ。
「はい。清閃隊は闘う覚悟はできていると…」
「ふうむ」
 九重は腕を組んだ。クロキアへ降嫁の返事はあと十日ほどのちだ。雪路も雪矢も応えは決まり、桜の心も定まった。
 次は大臣たちと皇族、貴族たちを納得させる番だ。そのための御前会議は五日後。
「……深雨、あのね」
 こそこそと耳元でつぶやいて、時雨は一瞬顔をこわばらせた。
「いいんですか? そんなことして」
「だーいじょうぶだよ。目には目を、ね」
「はあ…」
 時雨は半信半疑ながらもうなずく。頭一個分下にある彼の頭を九重が撫でた。

「さて、内裏に戻らんと。着替えなきゃなー」
「じゃ、俺は上に戻ります」
「あいあいさー」

 大きめの行李から、小袖と、藍色の裳を出す。したに膝より少し下までの袴を履くのを忘れない。
 袷を整えて、髪をほどきながら、九重は自分の武器である筆架叉を拾い上げた。
 筆架叉は「十手」によく似た武器だ。鉄製で、全長50センチ強。持ち手から三つの刃が鋭利にきらめく。重さはできるかぎり軽くし、刃の先端は鋭くとがっている。
 本来は十手と同じように刀や剣で斬りつけてくる攻撃を護手叉の部分で受け止めたり、逆手に持ち前腕に沿わせ、刀や剣を受け止めるなど、防御系の武器だが、九重のそれは敵を突き刺すことを目的に作ってある。むろん、相手を打ち付ける打撃系の武器でもあるから、それを利用することもある。
 九重の場合は戦闘時、持ち手に手貫緒をつけている。そうすることによって、打撃、刺突の攻撃が倍以上のものになるからだ。
「……カシュナ、ねえ…」
 ぽつりとつぶやいて嘆息。自分はあの大神官を知っている。
 会ったことがあるのだ。



 この、沙羅の地で。







 fin.
 ********************
 時雨ちゃんが女装するとまじかわいいらしいです(笑)まず内堀から埋めるべく奔走中。
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今度からみーちゃんと呼ぼう(笑)
しぐっちもここっちもなりきってるねえ(笑)
しぐっちと陛下で合作絵でも描きません?
頑張れ、2人とも♪ ストーリーに沿って適当にリンクさせていただいてます。ぺこり。
梧香月 2009/01/10(Sat)11:57:04 編集
せめてしーちゃんで(笑)
れ、れれれれレイア姫と合作?!///
わーい描きたいですー^^vていうか陛下の女装バージョンを描きたい自分がいます。うふふ。
こうみえても、プロですからね二人とも。
なりきり度は半端ないっすよ(笑)

こちらもリンクさせていただきます。よろしくお願いしますです。ぺこり。
日和小春 2009/01/10(Sat)13:58:06 編集
あわわ……
見たいような見たくないような……
これ以上、深みにはまりたくないるーちゃであった……

しかし……床下に下りて、てっきり九郎さまとみーちゃんの濡れ場が始まるのかと期待したら……がっかりだよ!(オイオイ)
ヴァル 2009/01/10(Sat)14:06:13 編集
ふっふっふ…
もう手遅れよるーちゃ☆のせちゃったもんね~~~。
だけど、黒髪じゃないから好みじゃないかな?笑

って、濡れ場て。ぇえええええヴァルさんんんん!!!///
九朗ちゃんはどんなでも女ですからねっいや術使って一時的に男になることはできますが…いやいやいやいや。
がっかりさせてごめんなさい(笑)
日和小春 2009/01/10(Sat)15:06:29 編集
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