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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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 紫水のお話。まだ保護されて日数が経ってない頃…?です。
 修学院生徒は週に2回、内裏と五神殿その他御社のお掃除や雑用やらをしなければなりません。
 すでに〝見習い〟として働いている生徒、ほんとに週に二回だけざかざかご奉仕する生徒さまざまです。
 ちなみに紅蝶は姫兵見習い。月緑はご存じのとおり巫女見習い。正式に冠位を与えられていないのでピアス(宮廷管理下で働いてる証)とかはつけられませんが。
 
 では、どうぞ^^v


 紫水七歳。
 ● ● ● ● ● ☆ ● ● ● ● ● ☆ ● ● ● ● ●

「ねえねえ、今週、私たち白の神殿が当番ですって」
「やったあ」

 紫水は教室の壁に掲示してある当番表に群がる級友を横目でそっと確認した。そしていつものように窓の向こうに視線をもどす。
 気づかれないようにため息をこぼした。
 
(………面倒くさい)

 この規則は普段はたちは入れない内裏や神殿の中を見られるというので修学院のほとんどの生徒が喜ぶ。
 特に女子は後宮の雅やかな生活や、殿上人や公達の姿を見られるというので明らかに浮足立っている。
 紫水はとんとんと文机を叩く。そっと溜息をついた。
 海神の一の姫君に助け出され、もう半年以上は経っただろうか。いま紫水は海神一族が住まう一角の長屋に姫君-あきらの乳母だった女性と住んでいる。
 一の姫に乗じて若君も紫水をきにかけ、その手厚い待遇に、正直戸惑うことばかりだ。
 修学院入学だって、ひととおりの…おそらく並以上の知識をあの組織で詰め込まれたから必要なかったのに、気づけば初等科に転校していた。
 自分の他にも海神の一族の子息は沢山居る。そのなかで紫水は遠縁の子としてすんなりと受け入れられていた。
 誰も、敵国で毒薬や兵器を作る手伝いをしていたなんて知らない。

(同情されてるのかしらね)

 自分なんていなくなっても誰も困りはしないのに。優しすぎるあのひとたちは紫水の手を離さない。
 最初は振り払ってばかりいたけれど、最近は……あきらめた。
 いつからだったろう。

 …そうだ。

 一族の中で抜きんでた能力を宿す若君に怒声をあびせられてからだ。

『勝手に自分を犯罪者と思いこんで、俺たちを被害者にして、憐れむのもいい加減にしろ!! 自分が傷ついてるってことに気づけっ!』

 馬鹿馬鹿しいと思った。傷? そんなものどこにもない。
 そう思って、嘲笑とともに出すはずだった声は、震えていた。
 心とは裏腹に、頬が濡れた。

「海神さん、いこうよっ」
「えっ、あ…ええ」

 級友の…確か、左大臣家の末娘が話しかけてくる。とっつきにくく毒舌で、人とかかわり合うのを嫌ってる紫水に声をかけてくるのはこの少女と、隣のクラスのやたら元気な商家の娘ぐらいだ。
 もの好きはいるものだ、といま世話になっている女性―喜宇にもらしたら笑っていた。
◇ ◇

「わたしね、来年白の神殿にあがれることになったのっ」
 ぞうきんを絞りながら、嬉々とする少女の言葉に、軽く眼を瞠った。
「……あなた、巫女になるの?」
「うんっ! …え、意外、かなあ?」
「…いえ、その…あそこって大公閣下の姫君たちがほとんどって聞いた気がするのだけれど…」
「うーん…、偉い巫女様たちはそうかもしれないけど…、下位には庶民も貴族も関係ない子がたくさん入ってきてるよ? いまの巫女姫さまが就任なさってからとっても増えたってお父様が仰ってた」

(…いまの…巫女姫…)

「よおし、やるぞーっ」
 渡り殿端から端まで少女たちがぞうきんで行ったり来たり。上級生の姿もある。
 内裏や神殿は毎日掃除されているはずなのに。なぜ自分たちにわざわざやらせるのか分からない。
 手は霜焼けになるし、足先は真っ赤。たすきがけのおかげで冷たい風が直に触れる。
 
「あ…巫女姫さまよ。きゃあっ海神くんもいるっ」

 傍で柱にはたきをかけていた上級生がひそりと声をあげる。顔をあげれば、ずいぶんと離れたところで十数人の巫女を引き連れた列が簀を渡っているのが見えた。
 最前列にいるのが、おそらく巫女姫。一歩下がって護衛の海神蒼牙と後宮姫兵のひとりがついている。
 確か巫女姫は紫水よりも二つは年上だったはず。その割には華奢で、いまにも折れてしまいそうな印象をうけた。
 巫女姫は屋内に入る前に、ふと階を登る足をとめてこちらを見た。掃除にいそしむ生徒たち、いちはやく気づいてひざまづいた担当教諭を視界に映す。
 そして、苦笑してから、淡くほほ笑んで優雅に一礼をした。そして姫兵が差し出す手をとって、今度こそ建物の奥深くに入って行った。

(…あれが…若君の主君…)

 少し胸がざわついた。
 若君がただひとり護り抜くと決めている少女はあまりにも頼りなげで、気の弱そうな姫君。
 それに。
 紫水はあの笑い方がどうも好きになれないと思った。
 微笑めば何もかも穏便に済むとでも考えているのだろうか。
 それは、確かに美しい顔立ちだけれど。

(…内親王なら、苦労知らず。ってところなのかしらね。何も汚れを知らない。そんな感じだわ)
 
 少し乱暴にぞうきんを動かす。なぜか無性にむかむかしていた。
 この感情はなんだろう。
 正体のわからないものがぐるぐると胸の中で暴れている。
 紫水はその感覚を振り払うために雑巾がけ競争をしている級友たちに混ざった。


 fin.
 +++++++++++++++++++
 紫水ちょっと嫉妬編? 彼女、今でも桜が苦手だそうな。
 紫水は桜の事情知りませんからね。まあ知る必要ないのかもしれませんけど。傍目から見たら、こんな感じかなって笑
 よーし次は紅蝶だー^^v
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紫(つー)ちゃん……
凛は紫水ちゃんのことをこう呼びます。このお話のときはまだ出会っていないかも。
時間がかかると思うけど、だんだんと心がほぐれていくといいね。君を気にかけている人はたくさんいるぞ? 紫ちゃんはひとりじゃない。
ヴァル 2009/02/27(Fri)11:44:53 編集
凛くん…
三人が三つ子ちゃんと出会うのは、十歳前後…になるのでしょうか…。
大人ぶってるけどやはり七歳。子供故に潔癖だし、「これでいいか」と思えない。
ああ、はやく凛くんに会ってもらいたい。そしてつんけんしてる紫水をまあるくしてもらいたい。
心がほぐれて日差しがあたるといいな。
凛くん紫水をよろしくね? あの子をよろしくおねがいします。ぺこり。


みんな、ひとりじゃないんですよね。
日和小春 2009/02/27(Fri)11:55:29 編集
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