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シュアラ編中心サイト。
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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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 カルミノ編エドエルラストに向けての一歩。
 フリーダムに書いていきたいと思います。エディについても詳しく書きたいですし♪
 まとまったらあちらの賢者の石か、姫おり本編サイトを復活させて、載せましょう^^v
 習作なので、どうぞ何かございましたらいってください^^!


 ●○● ●○● ●○● ●○● ●○● ●○● ●○● ●○● ●○●

 昔々、あるところにそれは仲の良い王様とお妃さまがおられました。
 王様は慣例を嫌い、側室をとらず、お妃さまただひとりだけを愛されました。その仲睦まじさは隣国にとどまらず大陸全土で噂されるほど。
 そして優しい王様、お妃さまに治められる国は乱れることなく、平和そのものでございました。
 けれども、その国には心配事が一つ。不幸なことに王様とお妃さまの間に御子がなかなかできなかったのです。そのため、国中が気をもむ年が何年も続きました。
 そして、皆の祈りが天に通じたのか、お妃さまは身ごもり、それは美しい姫君が生まれたのでございます。その姫君の名は、エルザ。

 エルザ王女が生まれた日は国中が喜びの歌を歌いました。


◇ ◇



 女の子なら、誰でも夢見るもの。たったひとりの大好きな人との出会い。
 おとぎ話のような、甘く切ないラブストーリー。
 その日々がいつかくるようにと願ったのは数知れず。どんなひとだろうと想いにふけって母に呆れられたこともある。
 
 それは、女の子なら誰だって与えられるべきことだ。

「私がたとえ王女でも、諦めるつもりはないわ」

 城門からたくさんの馬車や荷車が入ってくるのを見下ろしながら、エルザはつぶやいた。
 腰まで届く青銀の髪はゆるくウェーブを描き、健康なミルク色の肌。瞳は北欧に現れるオーロラによく似た色だ。つんととがった鼻に、ほっそりとした顔。笑みを浮かべれば「カルミアン・ローズ(王国の薔薇)」と呼ばれる大輪の花の出来上がりだ。
 国中から愛される王女から零れた言葉に、傍に控えていた侍女のパールは心配そうに口を開く。

「…無理をしてらっしゃいませんか?」
「何言っているの。私はもう16歳よ? しかも大国カルミノ唯一の王位継承権を持つ。誰かと結婚をしないと国がほろびちゃう」

 利発にハキハキとものを言うのは父親似だ。恋をあきらめないのはおそらく母似。愛すべき両親から生まれたのは自分一人で、将来女王になることに何の憂いもない。勉強だってしている。
 顔にかかった青銀の髪をはらいながら、窓枠にこしかけて、エルザはにっと笑った。

「だけど、〝運命の人との出会い〟を諦めるつもりはないわ」

 そう。運命の人と出会って、おとぎ話のような恋に落ちる。カルミノ国第一王女の前に自分は女の子だ。
 父母のようなただひとりの愛する人を見つけることを夢見ることが何の罪になるのだろう?
 国王である父も王妃の母からもそれについてとがめられたことはない。
 カルミノ王家譲りの好奇心でいっぱいの瞳を見て、パールはほうっと息をつく。そしてエルザの隣に腰かけた。
 
「わたくしはなんだか不安ですわ」
 
 明日からの三日間。カルミノの友好国や同盟国、藩属国、それこそ大陸中から集まった婿候補たちのなかから、エルザは永遠の伴侶を見つけ出さなければならないのだ。
 16歳はこの国では成人の年。国王は娘のために大園遊会を開いた。
 恋に憧れを抱き続けて育った王女にそれを強いるのは苦痛なのでは、とパールは思った。
 だが以外にもエルザはわくわくしているようだった。

「随分と悲観的ね。パール。大きなチャンスだと思わないの?」
「チャンス?」

 エルザはピン、と人差し指をたてた。淡くピンク色がかった爪が光る。

「一度にあんなにたくさんの男性と出会えるのよ? きっと素敵な出会いがたくさんあるわ。一生の友人もできるかもしれない。必ずたったひとりのひとに出会える。これはおばあさまゆずりの直感よ」
 
 大好きな亡き祖母の形見である指輪にキスをして、パールにウィンクをする。城中でエルザの笑顔とウィンクに勝てる者はいまのところいない。
 パールはぐらりと考えが揺れそうになりながらも、わざと力を入れて眉をしかめた。
 そんな幼なじみである侍女の姿に肩を揺らして笑ってから、エルザはパールに顔をよせて耳打ちした。
 
「でもね、簡単に王女さまらしくしてるとはお父様と約束してないの」
「…王女、まさか…」

 パールがさーっと顔を青くする。その様子を楽しげに見つめて、エルザは満足そうに笑う。そして立ち上がって、磨き上げられた床の上でくるりと優雅にターンしてみせた。
 その拍子に彼女が来ているコスモス色のドレスの裾がふわっと円を描く。

「玉座の上で出会うなんてまっぴらよ! 地に足をつけなくちゃ。歩かなきゃ。見つけなきゃ。待つなんてナンセンスッ」

 鼻歌まじりにワルツのステップを踏んでいる主の姿に、パールは本気で頭痛を覚えた。このお姫様はひとつどころにとどまることを知らない。
 大輪のように麗しいお姿を持ちながら、鳥のように自由に考えるお方。この大国の中で、よくこんなにものびのびと育ってくれたものだ。
 いや、この国だからこそ、なのかもしれない。
 王女よりも二つ年上のパールは、苦笑交じりに立ち上がる。くるくるとダンスを続けるエルザの横を通って、彼女の衣装室に向かった。
 ふと扉の前で立ち止まり、振り返る。

「わたくしは何も聞いていません。それでよろしいでしょう?」
「それでこそパールよっ」
「でも、手引きや協力などはいたしませんから。御了承のほどを」
 
 夜の謁見式に着るエルザのドレスを衣装室から出しきて、パールはさらっと言いのけた。
 このカルミノの城に集まるのは婿候補だけではない。カルミノが敵対している国以外から有力諸侯や王の名代なども集まってくる。彼らと謁見することはさすがのエルザも逃れられない。

「あらっどうしてよパール。いままでだってお城から抜け出る時も、夜中に厨房のジャムとパンを拝借するのを手伝ってくれたじゃない」
「それから初代カルミノ王の像を壊してしまったときも、城の隠し部屋から出られなくなったときも。ですが、今回ばかりは駄目です」
 
 ぷうっと頬をふくらませるエルザに対し、パールはにこり、と飾り気のない笑みを浮かべる。亜麻色の髪は頭の上でお団子にしてあり、薄いバラ色のリボンがつけられていた。

「運命の恋は自分の力で見つけるものですわ。エルザ=ナプテラ王女? 世界中の女の子の常識です」

 しばらくむうっとしていたエルザだったが、パールの言葉に納得したようで、ちゃめっ気たっぷりに笑って見せた。

「いいわ。望むところよ。パール=キャロル。あなたの侍女頭としての仕事っぷりをとくと拝見させていただくわ?」

 パールは裾を持ってお辞儀をする。それから背筋を正して手を打ち鳴らした。すると、エルザの部屋の扉からいつもの倍の数の侍女が入ってくる。見覚えのある者もいるし、いない者もいた。
 さしものエルザもあっけにとられる。パールは澄ました顔で口火を切った。

「国王陛下の命で侍女の数を増やさせていただきました。何事もお気軽にお申し付けくださいませ?」

 父の方が一枚上手だったらしい。逃げられるものなら逃げてみよ。と好々爺として笑っている姿が目に浮かぶ。
 エルザは整った眉をつりあげたが、すぐに極上の笑顔を浮かべた。障害はあればあるほど燃えるもの。
 腕の見せ所ね、とつぶやいて、エルザは沈みつつある夕陽を見るべく窓を見上げた。


 エルザ王女の世紀の婿選びが幕を開けた。


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