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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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まだ未完成ですができたとこまでー(150711)
ちょっとだけ続き(150717)
とりあえずこんな感じで終わっておく(150720)






 瞼を開くと、見慣れた障子があった。扇を握りしめてつめていた息を吐く。左右を見渡して、背後の窓から坪庭を見下ろした。
(よかった。結界は破れてないみたい)
 無事東館の奥についたことに安堵する。通常時の結界は勿論、この部屋を中心に蜘蛛の巣状に張り巡らされた外部の者を寄せ付けない術なども桜には影響しないようだった。
 罪悪感を抱きながらも、閉じた扇を仕舞う。桜は一度、深呼吸をしてから、ゆっくりと引き手に触れた。
 渋みのある香りがくゆる座敷の中。敷かれた布団の上で目を閉じて横たわる蒼牙がいた。入るときに気付いた匂いは、四隅に立つ香木からのもののようだ。丸窓や明かり取りが開いてあるから、空気はこもらずに流れている。
 桜はなるべく音をたてないよう近付いて枕元に腰を下ろした。脂汗のにじむ寝顔に、つきりと胸が痛む。それでも蒼牙から視線を逸らす事はなかった。
 やがて桜の気配に気付いた蒼牙は、ゆっくりと瞼を開き顔をぎこちなく傾けてくる。
「……桜?」
 充血した翡翠の瞳がまるくなる。黒曜石の瞳に戻っていない。極限まで霊力を削っている証だ。受けた邪気を浄化するべく霊力を注ぎ込み続けるため、いわゆる貧血のような状態に陥っているのである。
「……どうやって……」
 桜は無言でハンカチを取り出し蒼牙の額に当てた。丁寧に汗をぬぐいながら静かに唇を開く。
「連絡をくれなかった人には教えてあげません」
 一瞬ばつの悪そうな顔をされ、桜はため息をつきたくなった。叔母が密告してくれなければどうなっていただろう。
「……だれも、いないんですね」
「……ああ、義兄上達は飽きたとかで西館にいるよ。叔父上は表で仕事。結局寝てるしかないから、この方が……っ」
 説明し終わる前に、蒼牙が軽く咳き込んだ。傍の卓に置かれた水差しから冷水を吸い飲みに注いで口元に持って行くと、小さく詫びてから喉仏を動かして飲み干した。
「……顔色、悪いですね。食べられてます?」
「一応ね。だけど霊力がなかなかたまらないのが少しネックかな」
 ふ、と息をついてそのまま蒼牙は目を閉じる。術師間の霊力の供給は相性の合う者か、同じ属性の者が作り出す丸薬などを服用するのが一般的だ。だが、蒼牙は霊能力が高いだけでなくあまねく水神の加護を合わせ持つ稀有な術者である。実力は龍彦や青玻が上でも、純粋に東鬼の中で異能力だけでみると、蒼牙ひとりが突出しているのだ。だから丸薬を飲んでも砂漠に水がひとかけら落ちるだけのようなもので、効きが悪いのである。
 昔のように契約者と体液を交換するような方法は、もう廃れて――。
「……」
 桜はこくりと喉を鳴らす。蒼牙が目を閉じて休んでいることを確認し、視線を傍の卓に滑らせた。水差し。薬湯。空の土鍋。そして、林檎やみかんの入った籠、その横には皿と果物ナイフ。
 咄嗟にそれに手を伸ばし、柄を掴んだ。

 がしゃんっ

「…………何してんの」
 異変を察知して敏捷に動いた蒼牙が、桜の手首を軽くひねあげる。走った痛みに思わずナイフが滑り落ちた。畳の上に転がったナイフをもう一度掴もうとするが、跳ね起きた蒼牙がそれを蹴り飛ばして阻む。そのまま桜の両腕を掴んで引き戻した。
「……っ」
「何しようとした?」
 武道の心得のある者とない者。なによりも男女の体格差。攻防は一瞬で決着がついたが、桜は息が荒くなり、背中が汗ばみキャミソールが吸い付いていた。
「言え」
 射殺すような視線と、加減なしに掴まれた手首が痛い。蒼牙の全身から発する怒気にあてられ無意識に震えながら桜はこたえる。
「……わたしの、血、を……」
 霊力の高い術者や神力の加護が強い者の体液は極上の治療薬だ。古代では血液で怪我を治したり、病気の回復を促したりさせていたが、中古時代に血液を使っての術は禁術とされ、現代でもタブーとされている。
 けれど、桜に限っては、一滴(ひとしずく)で良いのだ。桜の能力は、兄が〝泉癒〟と名付けたとおり、枯れた大地を甘露の雨で潤す。血液を少量だけ与えれば、邪気を鎮め、治癒を促す力を与えることが出来る。
「ふざけんな」
 地の這うような声色にひるみそうになりながら、桜は気丈に翡翠の瞳を見つめ返した。
「ふざけてません。少しだけ血が出ればいんです。傷は残りませんから」 
「……どうしてもって言うなら血液以外でも構わないんだけど?」
 ふっと腕が解放される。桜は蒼牙の言葉の意味がわからなくて目を瞬かせた。蒼牙は一切の感情が抜け落ちた表情で続ける。
「キスじゃ足りないな。そうだ。抱かせてくれれば良い」
「……っ」
 かっと一瞬で身体中が火照る。蒼牙は掠れた咳を一つ零してから、挑発するように続けた。
「動くのしんどいから桜がやるんだけどそれでも良いの。歯止めもきかない」
 耳を塞ぎたくなるほど過激な表現に、桜の瞳に怯えが走る。蒼牙はそれを認めると重い身体を布団に戻した。熱が少し上がったかもしれない。
 ただでさえ、この状態で桜が傍にいるとその柔肌に歯を食いこませたくなるような衝動にかられるのだ。自己嫌悪に軽く舌打ちをする。
「分かったなら早く帰れ」
 とどめに吐き捨てるように言い放ち、蒼牙はそのまま背中を向ける。いきなり動いて傷口が開いたのか、白い寝間着に、うっすらと血がにじんでいた。
 桜が無言で立ち上がる。ぱたん、と障子を締める音が響いた。蒼牙は安堵しかけて、違和感を抱き、まさかと振り向いた。
 桜は出て行っていなかった。出て行くどころかうっすらと光が落ちた室内のなかで、正座のまま俯いてたどたどしくワンピースのボタンを外し始める。
「何やってんだよっ」
 無意識に怒鳴ると、涙で滲んだ琥珀の瞳がきっと睨み返してくる。
「そんな顔色で、うなされる蒼牙くんを見て、私が帰れるわけ、ないじゃないですかっ」
 震えながらも胸元を緩め終わり、気持ちを吐露した勢いでパフスリーブの袖を抜く。パステルブルーのワンピースはするりと落ちて、腰の辺りで止まり、上半身はキャミソールと下着だけになる。
「さく……」
 身を起こしかけていた蒼牙の肩を全力で押して唇を合わせる。はしたないと呆れられても構わない。これで彼が楽になるのなら。恥ずかしくても我慢できる。
 桜はぎゅっと目をつぶった。その拍子に、ぽろりと熱い涙がこぼれ落ちる。つたないながらも懸命に舌を動かすと、ぐっと頭を抑えられて体の位置を上から下に組み替えられた。
「……やっ、起きちゃ……、っ」
 涙を零しながら胸板を押し返す桜の腕を固定して蒼牙は思い切り彼女の口内をまさぐる。
 唇を重ねただけで、身体中が沸騰したように高揚した。持て余していた飢えは瑞々しい甘露に触れて理性を蝕んでいく。
 細い体をかきいだいて、荒々しい口づけを飽きもせず繰り返す。桜はやがて抵抗を諦めて絡みつく舌の動きに翻弄されるがままになっていた。
 桜が息苦しそうに喘ぐのを合図に、蒼牙が歯茎の裏をゆっくりと撫でるように舐めて舌を引っ込めると華奢な身体がびくんと跳ねた。そのまま白い首筋に舌を這わせようとして、ふと頬に冷たい金属の感触がぶつかる。我に立ちかえれば、自分の腕の下で、愛しい少女が唇を噛んで身体を震わせていた。
「……」
 蒼牙は、熱のこもった息を吐きだしてから、桜の額と自分の額をこつりと合わせた。目を固く閉じていた桜は、何かおかしいと恐る恐る目蓋をあける。
「……そう、がくん?」
 瞬きをすればまた涙が転がり落ちる。それを蒼牙が唇で柔らかく吸って、くすぐったさに思わず肩をすくめた。
「ごめん。怖かったよな」
「私は……」
「大丈夫じゃないでしょ。いまそう言われたら俺、たぶん自分を許せない」 
 蒼牙の瞳は、不思議な色合いをしていた。翠の水面から深く深く潜っていった深海の静かな闇の果て、その淡の色は、水面のようにゆらゆらと変化する。
 その色に魅入ってぼんやりしている間に、腕と背中を軽く引き寄せられて、身体を起こされる。
「……指輪、いつもつけてくれてるんだ」
「え? あ……」
 蒼牙が苦く笑いながら緩められてあらわになった胸元にそっと触れる。そこには細い銀のチェーンに通された小さな指輪がある。
 ムーンストーンと二粒の小さなアクアマリンをくるりと囲んだ、少し細身で華奢なデザインのプラチナリング。高3の初夏に、小さな宝石店で見つけたものだ。一点ものしかないとのことで、慌てて値札を確認。高校生が手を出せる値段ではなかった。その場で払える限りの予約金を店主に払い、拝みこんで半年の猶予をもぎとってきた。
 大学受験の傍ら、空いた時間はむしゃらにバイトして(それこそ義兄上から危険手当の出る仕事まで斡旋してもらった)、クリスマスに間に合うよう必死で稼ぎまくった。
「結局、正月になっちゃったんだよな」
 あと一声足りずにクリスマスシーズンもバイトして、ようやく貯まって買えたのが年末。除夜の鐘をBGMに渡すのは流石におかしいだろうと思いとどまり、正月の挨拶回りで行った紫鳳院の屋敷でようやっと渡せたのだ。


「……蒼牙くん……?」
 ひとつひとつなぞるように語る彼の声は消えそうに儚い。胸元に触れる大きな手にそっと自分の手を重ねると、包み込むように握られて、蒼牙が顔を上げた。
「これ以上進めば、俺はもう、桜を離せなくなる。桜が応えてくれたなら、一緒に、幸せになりたい」
 彼の顔色は大分ましになったものの、まだ悪い。触れた手のひらは熱い。早く褥に戻るよう促さなければと思うけれど、常とは違う色の瞳に真っ直ぐ射抜かれて動けない。
 何故だろう。これは、求婚の言葉だ。なのに、つきりとまた胸が痛む。重ねられた蒼牙の手のひらが、震えている。すぐそばにいるのに、遠く隔たれたような心地になって、どうしたらいいのか分からない。
「だけど」
 一度何かを耐えるように目を閉じてから、蒼牙が短く切りだした
 駄目。言わないで。
 かすかに動いた桜を制止するように、ふわりとむき出しの肩に羽織がかけられる。

「桜は俺と、また子どもを作れる?」

 静かな問いかけは、桜の中でわずかに燻っていた仄火を一瞬で消した。羽織をかけてもらったはずなのに、背中を冷たい風が通り抜ける。
 そのまま全身の血がさあっと引いて、胸が、押し潰されているかのように、痛い。
 蒼牙を見ているはずなのに、違う。自分は、彼とよく似た誰かと話している。そんな錯覚が、遠い記憶を呼び覚ます。


 小さくまとめた荷物を脇に置いて、端座した息子が、ふかぶかと頭を下げる。
 顔立ちや身体つきは父親譲りだが、瞳は母親の桜と同じ琥珀。書を好み、いつも穏やかに微笑んでいた。大人しい気質なればこそ、葛藤を抱え込んで、身を切る道を選んでしまった。気付いてやれなかった。なのに。
『父上、母上。本日まで大切に育ててくださり、ありがとうございます』
 ――僕は幸せでした。
 不甲斐ない親を詰ってくれた方が、どんなに楽だったろう。身体に気をつけるようにと月並みの言葉しか出てこない。やるせなさをにじませた表情のまま、静かに笑って頷くと、息子は背を向けて二度と振り向かなかった。

 昏い、暗い、御簾の内。
 駆けつけた先に在ったのは、一番上の娘の亡骸だった。
 ぱたりと投げ出されたかぼそい手。うっすら微笑みながら二度とめざめない娘の胎には、もうすぐ生まれるはずだった、命が。
 枕辺に膝をついて、名を呼んだ。これは悪い夢。だって最期に会った娘は幸福そうにお腹に話しかけ、伴侶にその身を預けていた。
 呆然としている横で、まだ幼い末の息子が姉の顔をきょとんと見下ろしていた。ここにくる道すがら戯れに詰んだ撫子の花を握りしめたまま。大好きな姉上にあげるのだ。そう無邪気に笑って乳母たちの涙をさそった小さな子は眠りから覚めない姉を不思議そうに呼ぶ。
『姉上、姉上? 起きてくださりませ』
 がんぜない呼び声に、たまらず涙がこぼれて、そのまま夫の腕の中で気を失うまで叫び続けた。
 最愛の娘を喪った衝撃は、もともと強くない身体を更に弱らせた。確実に流れる月日の中で、手元に残った子供たちの為に早く身体を治さなくてはと焦るものの、ふいの病が自分を襲う。

 誰かの嫁になるくらいなら巫僧になりたい。そう泣いてすがったあどけない末の姫。いつも口をきゅっと結んで、何かをこらえていた末の息子。もっともっと甘えさせてやりたかった。抱きしめてあげたかった。
 まだ、置いてはいけない。
 なのに、手が届かなくて。
 零れ落ちる自分の命の不甲斐なさを噛みしめながら、ただ願うしかなかった。


『どうか、幸せになって』

 その祈りの果てに遺されたものは。
 ――血に染まった、簪。


「桜!」
 大きく肩を揺さぶられて我に返った途端、ひどい吐き気と眩暈に襲われて口元を袖で覆った。
「……っは……」
 手足に力が入らない。息が上手く吸えない。深い泥の底にいるように息苦しかった。
 呼吸ができなくて混乱状態に陥っていると、ぐいっと後頭部を引き寄せられて、唇を塞がれた。
「んん……っ?」
 身体を固定されたまま、口が完全に塞がれて、酸素が入ってこない。
 桜は繋がった唇から温かい吐息が送られてくることに気付いた。そうだ。キスをするときは、鼻で、呼吸するの。
 くらくらする頭で、それだけを考える。一度離れて、また唇が重なる。今度は、深く、深く。歯列を割って入り込んできた舌が、桜のそれを攫い甘く吸い上げ絡み合う。桜は必死に蒼牙の胸にしがみついた。
 強張っていた身体がくたりと緩むと、蒼牙が唇を離して耳元で静かに囁いた。
「吸うんじゃなくて、吐くことだけ考えろ。ゆっくり。そう、上手だ」
 桜は霞んだ意識の中、その声だけを頼りにぎこちなく呼吸を繰り返した。身体に力が入り頭の靄が晴れるまで、ずっと抱きしめられながら。
「……ごめん、なさ……」
 ようよう息が整うと、蒼牙はほっとしたように笑った。彼の方が重病人なのに。桜はじわりと涙がにじむのを感じながら、身体をゆっくり離した。
「こっちこそ、ごめんな。こんなこと急に話して。……俺、こんなんばっかだ」
「違います。蒼牙くんのせいじゃ……」
 そう。いずれ決めなくてはならないことだったのだ。前と今は違う。けれど蒼牙と桜は前世と同じ能力を身体に秘めている。
 桜は唇を噛んで考えた。このまま身体をつなげれば、結婚すれば、いつかは子どもが出来る。もしかしたら、その子達を、また辛い目にあわせるかもしれない。
「……今なら、ぎりぎり、間に合う」
 一瞬ためらった後、蒼牙がうめくように続けた。桜は顔を上げる。
「……間に合う……?」
「……俺は聖人君子じゃない。好きな女がいたら抱きたくなる。だけど、無理矢理は嫌だ。もしさっきのことが受け入れられないなら、俺じゃない誰かを選んでくれ」
 蒼牙ではない誰か? 桜はつきつけられた選択に、一瞬目の前が真っ暗になった。
 だけど、そうだ。当たり前のことを彼は聞いている。自分だって一度も考えなかったと聞かれれば、答えは否だ。
(澪、蒼太、沙緒、青牙)
 大事な、大事な子ども達。最期まで守ってあげられなかった。
 このまま行けば、また同じような運命が待ちうけているかもしれない。
 それくらいなら、いま引き返せる場所で、
(……他の、誰かと)
 うなだれたまま、桜は瞬いた。蒼牙のぬくもりが残った身体を腕で囲う。
 蒼牙がくれた優しいキス、
 溺れるようなキス。
 疼くような熱。
 それを、顔も知らない誰かと?
 そして、目の前の彼は、自分ではない女性を抱くのだろうか。自分にしてくれたように柔らかく抱きしめて、耳元に囁きを落として、それから。
 理性は、駄目だと桜を引き留める。蒼牙の言うことが最もで、子ども達のことを考えれば身を引くのが一番なのだ。
 なのに。
「……桜?」
「……ごめん、なさい」
 羽織がぱさりと褥の上に落ちる。無意識に、桜は蒼牙の首にかじりついていた。
 自分が目の前の人以外に抱かれることを考えるだけで怖い。彼が、他の女性に笑いかけることが、堪らなく嫌だ。
 頭ではわかっていても、身体が、心が全身で彼を求めている。もう、とっくに戻れない所まで来てしまった。
「そばに。……お願い、離さないで」
 涙を流しながら懇願すると、蒼牙が強く抱きしめ返してきた。この温もりから、もう離れられない。その気持ちを優先してしまった自分の罪深さ、迫り来る不安に、押しつぶされそうになりながら、桜は蒼牙にすがりつく。
「俺と桜で背負っていこう。大丈夫」
 震える桜の額へ口付けを落とせば、熱い涙があとからあとからこぼれ落ちた。揺れる琥珀の瞳に見え隠れする焦燥をなだめるべく、蒼牙は円やかな頬を包んで笑う。
「簡単に死ぬつもりない。桜、そう言ったじゃん。俺も、しわしわのおばあさんになった桜見るまで絶対くたばんないからさ」
 茶化しながら触れるだけのキスを落とせば、桜は少しだけ年相応の顔で見つめてきた。
「しわしわになっても、嫌いにならない?」
「当たり前だろ。……桜は年取ってもずっと綺麗に決まってる」
 くちごもりながらもきっぱり返す。そうすれば、桜の頬にさっと赤みがさした。それから、少しだけ身を乗り出して、蒼牙の唇の横へ控えめに口付ける。
「……大好き」
 聞き逃してしまいそうな小さな囁きを受けて、蒼牙が満足そうに微笑んだので、桜も笑いながら瞼を閉じる。そうして合わさった唇は、少しだけ塩からかった。
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