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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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※未完成※
とりあえずできたとこまで。恋ーはすりるしょっくさーすぺんす!(160316)







【金曜日の魔法】
 
 襟の胸当てのスナップをひとつずつ外す。次に透明な小瓶から、少しとろみのついた水を、ひとすくい。胸元から鎖骨までなぞるように浅く塗る。元通りに服を戻せば終わり。
 沙緒はリボンの端を引っ張り、曲がっていないか鏡で確認した。バレッタを止め直し、笑顔を浮かべてみる。
「しゃーおー、行くよー」
「う、うんっ」
 背後から早弓に呼ばれ、鞄を取って化粧室をあとにする。入り口で待っていた早弓はげんなりとした口調で愚痴りはじめた。
「高二になってから試験の連続でイヤになっちゃうなぁ。大学部で模試までやんなきゃいけないなんて」
「わたしも、さすがに肩凝っちゃった」
 修学院では、高二から内部進学、外部受験問わず受験モードに切り替わる。それは中等部でもそうだった。新学期に浮かれる間もなく、授業の雰囲気は一気に変わる。ついていけない生徒は次々に淘汰され、他の私立に流れていく。残った内部進学候補者にも学校側は妥協を許さず、優秀で向上心の高い生徒をレベルの高い他校に送り出すことも厭わない。
 中等部在学時、沙緒は内部進学にかろうじて引っかかるまでが精一杯だった。けれど、今回は違う。外部の大学に進学する為に、順位を地道にあげている真っ最中だ。スポーツ推薦で入学した早弓も同じである。
「今回の模試、合格率自信ないなぁ」
「大丈夫だよ。だってさゆちゃん、4月の試験で一気に平均点上がったもの」
 入学当初、自分は頭が悪いと項垂れていた早弓だが、決してそんなことはない。早弓のテニスは全国大会に通じる程の実力だ。テニスは運動神経だけでなく途方もない精神力が求められる頭脳戦でもある。頭の回転が悪くないはずがないのだ。
「沙緒と、癪だけど結弦に教えてもらったおかげたよ」
「鏑木さんの言う通り、さゆちゃんはコツと効率を掴むのがとっても早いから、自信持って。ほんとだよ?」
 早弓は照れたように笑いかえした。背が高くボーイッシュな雰囲気を持つ早弓だけれど、内面には可愛いもの好きで、世話上手な女の子が隠れている。そんなギャップから、年上の、特に大学部の男性からかなりの人気があったりする。
「今日はこのまま大宮寺先輩のお家行くんでしょ?」
「うん。さゆちゃんもだよね」
「明日休みだからね」
 改札口を抜け、ホームに向かう。エスカレーターを昇りながら早弓は楽しげに続けた。昼過ぎの微妙な時間だが、大学やオフィスが立ち並ぶ土地柄か、朝と同じぐらいの混み具合だった。
 滑りこんできた各駅停車の電車に乗って、旅行広告を見つけると早弓はうっとりと頬を赤らめた。
「京都もっといたかったなぁ。鈴音さんも璃音さんも素敵だったし。ゴールデンウィークってやっぱり混むの?」
「うん。あ、でもホテルや旅館の心配がなければ平気だよ」
 そうか。試験で忘れかけていたけれど、もうすぐ大型連休だ。来年はきっと遊ぶ暇なんてないだろうなと沙緒はちょっとため息をつきたくなった。
「遊ぶ時は遊びたいよねー。結弦ってば二人で箱根! なんて言い出してんの。二人は別に良いけどさあ」
「ふたりで、は、はこね……」
 箱根というのは置いといて。さらりと二人で旅行を計画出来る親密さや気軽に彼氏の家に泊まりに行ける親友が羨ましくもあった。
(……はっ。だめだめ。比べたりなんか)
 それぞれの速度があるのだから、悩むだけ損である。ゆっくり二人のリズムを見つけていけば良い。
「まったく狙いすぎでしょ。ドン引き。……うっわ特急混んでる。大丈夫?」
「二駅だから。さゆちゃんも気をつけて」
 あっという間に乗り換えの駅についてしまって、沙緒は残念な気持ちになりながらも電車を降りた。各駅停車を待ってもいいけれど、金曜日、流稀は二時まで講義が入っている。いつも学校に迎えに来てもらって行く形だけれど、部屋のなかで、『おかえりなさい』と言える機会を逃したくなかった。
「ドアに背中つけて、胸の前に鞄持つんだよ! また月曜ねー」
「うん。分かった。ばいばい、さゆちゃん」
 分厚い革製の学生鞄を胸にぎゅっと抱いていざ特急電車に乗り込む。言われた通り背後で閉じたドアに背中を預けて、真っ直ぐ立つ。満員状態で苦しかったけれど、想いはもう二駅先についたあとのことに飛んでいた。
(……今日、お泊り、できるかな……)
 約束したわけではないけれど、京都での会話を思い出して頬を赤らめた。一応鞄には泊まりになっても困らない程度のものが入っている。
 さきほど、一滴だけ垂らしたのは香油だ。義姉から渡された時は、甘いものをイメージしていた。けれど蓋を開けてみれば馴染みのあるシトラスで。かろやかに薫るたび、彼に抱きしめて貰っているような、そんな心地になる香りだった。
 本当は九重から渡されたものを使うはずだったのだが、時雨が取り上げて、繭から改めてプレゼントしてもらったもの。それを、流稀の部屋に来る日だけ、つける。そんなおまじないめいたことを、密かに続けていた。
「すいません、おかせて」
 ぼんやり夢見心地で俯いていた沙緒ははっと顔を上げる。目の前には中肉中背の大学生らしき男が立っていて、沙緒の返事を待つ前に足下に紙袋を置いた。
「ど、どうぞ……」
 やけに重そうな紙袋だな、と思いつつ身体をますます扉側に寄せる。狭い車内の中だし、荷物を置く金網に上げられなかったのだろう。
 車体が揺れるたび、足に固いものが当たって少し痛かった。しかも、沙緒の脇に立つ強面の学生と目の前の男は友達らしく、遠慮なしに近付いて話している。一駅目のアナウンスが入ってほっとしつつ何気なく視線をおろして、数秒固まった。
(……これ、なに?)
 乱雑に入った本の隙間から、光るものが覗いていた。それが、カメラのレンズに似ていると感じた瞬間、体中から血の気が引いた。
 ぱっと顔を上げて鞄を強く抱きしめる。気のせいかもしれない。数駅前に、大きな電化製品販売店があったはず。きっと、そこで買ったものか、修理してもらった製品が入っているのだ。
 それでも無意識にひざ丈のスカートを抑えるようにして、紙袋からそっと身体を引く。向こう側の窓越しに、一駅目のホームが見えて、安堵した。一度下りてしまおうと手すりを離した瞬間、腕をとられた。
「降りる駅間違ってない?」
「え……」
 目の前の大学生ががっしり腕を掴んで温和な表情を浮かべる。うすら寒いものを感じて、沙緒は思わず身体を震わせた。
「いえ、……わたし、ここで降りるので」
 いつまでも解放されない腕を軽く引っ張った。びくともしない。早く離してもらわなければドアが閉まってしまう。
「だって、もう一つ先の駅でしょ?」
 その言葉に悪寒が走る。開いたドアから押し入ってくる乗車客に押されるように、そのまままた扉側に背中を戻された。ベルとともにしまっていくドアを呆然と見つめるしかできない。
「怯えなくても平気だよ。さっきオトモダチと話してたの聞いてただけだし。なあ?」
「いちいちびびんなくてもいいじゃん。その制服、S学だよねー」
 周りを見渡しても、イヤホンをしながらスマホに夢中になっている学生か、疲れ果て立ったまま眠りこけているサラリーマンしかいない。優先席を占拠する中年女性達は韓流スターの話題に盛り上がってしまっている。退路を断たれたような心地にますます震えが増した。
「あらら、無視? つか、泣きそーだね。俺たちいじめてるみたいじゃん」
 肩に手を置かれ、もう顔を上げて学生達を見ていることさえ恐ろしかった。
「どいて、ください」
 舐めまわすような視線を避け、身体をよじった。中年女性達の買い物袋が僅かに隙間を作っていることに気付いたからだ。鞄を抱えなおして、男達に背を向けて僅かな隙間に肩を押し込めようと試みた。
『この先、カーブがございますので、車体が揺れます。お立ちのお客様は吊革や手すりにおつかまり下さい』
「――――ッ?!」
 アナウンスと同時に背後から羽交い締めされる。うなじに思い切り歯が立てられて舌でべろりと舐め上げられた。掠れた悲鳴はかき消され、とり落とした鞄だけが鈍く音を立てる。
 今度は気のせいでもなんでもない。腰に腕を回されて動きを封じられれたまま、胸を遠慮なしに鷲掴みにされて良いように嬲られた。混乱して、暴れようにも、もう一人の学生に肩を抑えつけられて逃れられない。無防備に背中を晒してしまった愚かさを後悔しても遅い。
「やだ……やめてくだ……」
「一駅分ぐらい付き合えよ」
 酷薄な響きにもう震えることさえできなくなった。次の駅まで10分以上はかかる。
 囲い込んだ腕に力がこもって足がわずかに浮いてしまう。内臓を圧迫されて息もつけなかった。そのまま、痛いほどに掴まれた胸や身体中を乱暴に触られ、頭を振って抵抗を示しても何にもならない。無粋な手はみるみる下腹部まで下がっていき、スカート越しに這いまわる掌がその端を掴んでたくしあげた。
「何やってんの?」
 その、声が聞こえた瞬間。まさかと思った。自分の願望が作り出した幻聴なのではないかと。けれど太ももをなぶっていた手と、背中に密着していた不快な感触が遠ざかり、沙緒はようやく顔を上げることができた。
「はあ?」
「ねー、何やってんの?」
 他の客から見えないよう立っていた強面の男が舌打ちしながら身体をわずかに引く。そこには、やたら可愛らしく小首を傾げた恋人が立っていた。
「ぁ……」
「べつにー。ちょっと話してただけ。なあ?」
 咄嗟に囲みから逃れようと動けば、彼に見えないよう、骨が軋むほど手首が握られた。けれど、何か察したのか、恋人が長い睫毛を瞬かせる。
「ん? え、何やってんの?」
「しつけーな。話してるだけっていってんだろ」
 まるで男達の言葉など聞こえぬと言わんばかりに、問いかけが繰り返される。沙緒は慄きながら不思議に感じた。何故、男達は気付かないのだろう。整った顔立ちで、首を傾げる様子は一見愛くるしい。しかし、瞳はまったく笑っていないのだ。現に段々と凄みが増している。
「えー、何やってんの?」
 声のトーンは変わらない。だが、既にここは流稀の間合いの中だ。ごく自然に立っているように見えるけれど、混み合った揺れる車体で、真っ直ぐな姿勢を保ち続けることは並の人間では不可能である。
 流稀はいつでも動きに転じられるように構えている。それに励まされて声を振り絞った。
「…………ちが……ちがいます」
「違うって。ねえねえ、何やってんの?」
 一歩、流稀が距離を詰めた。男達は舌打ちして、沙緒に批難の眼差しを向ける。
「からかってただけで、被害者ヅラ?」
「マジかよ。カノジョ、大人しい顔して冤罪詐欺とかやってんじゃね。今流行ってるよなぁ」
 下品に笑いあう彼等は、もう視界に入っていなかった。流稀の一挙一動に釘付けだったからだ。
「あ、カーブだー。うわっ」
 ――がしゃんっ、ばきぃ!
 不穏な音が響き渡るのと同時に、手首が解放された。目の前に広い背中が滑り込んでくる。普通の靴で、紙袋ごとカメラを踏み潰され、男達は唖然としてから車内というのを忘れてわめいた。
「なにしやがんだよ!」
「あはは、ごめーん。で、何やってんの? 冤罪ってなーに? 俺、何やってんのしか聞いてないよー」
 沙緒はすがるように流稀のジャケットを握りしめた。乱れた襟からリボンが床に落ちても構う余裕などない。安堵で一気に緩んだ涙腺が、視界をぼやけさせる。
「……る、き……せんぱ……」
「ねえねえ、で、何やってんの?」
 ようやっと違和感に気付いたのか、中肉中背の男がたじろぐ。流稀が一気に間を縮めてカメラを破壊するまで、一呼吸ほどもなかった。
 体勢を崩さないまま、流れるように体を動かす速さが流稀には備わっている。高校一年生から道場に通い始めたにも関わらず、目覚ましい成長ぶりだと長兄も驚いていた。
「な、なんだよ。カレシ?」
「冤罪ってなーに? お兄さんたち、冤罪着せられちゃうの? かわいそーだね!」
 気付けば、車内中の視界がこちらに集中していた。迷惑そうに顔をしかめるサラリーマンに、単純なる好奇心でことの顛末を見守る女子高生、かしましい中年女性達はとっくに話を止めてわめく男達を侮蔑の眼差しで暗に批難している。
「この、ひとたちに……さ、さわられ……ました……」
 自分が何か言わないと。その感情に突き動かされて沙緒は掠れた声で訴えた。
「えー? キコエマセーン」
 沙緒が弱腰なことを煽るように白を切られて、恐怖よりも悔しさが湧き上がった。
 ぎゅうっと拳を握りしめて俯きそうな自分を叱咤した。負けそうな気持ちと戦っている沙緒の耳に、小さな電子音が届く。視線を下げると、後ろに回した流稀の手の上で、スマホが光っていた。
『次の駅までしょっぴくから待ってて』
 沙緒にだけ見えるように後ろ手で打った文面を読み、返事の代わりに彼の腕にしがみついた。
「え? 聞こえなかったの? お兄さんたちの冤罪ってなーに、何したのー?!」
「勘違いしてんじゃねーぞ!」
 睨まれても、もうちっとも怖くはなかった。息を思いっきり吸って、あらんかぎりの力で沙緒は叫んだ。
「このひと達に、ち、痴漢されましたっ!」
「ちょ、おい」
「えっ、痴漢!? マジで? 最低じゃん! お兄さんたちそんなことしたの?!」
 流稀が驚いて思わずといったように大声で繰り返す。震えた拳は、大きな手のひらに強く包まれた。
「やだ、痴漢ですって」
「ええ、いやねえ。最近の若い子は」
 中年女性がこれみよがしに批難するのをかわきりに、車内中がざわめいた。好奇の眼差しを向けていた女子高生は、徐にスマホを掲げて痴漢の顔を撮る始末。
「リアル痴漢なうー! マジサイテー、ダッサイ」
 晒してやろ、とリップを塗った唇が弧を描く。相方と慌てていた強面の男の眉間にミミズ腫れのような青筋を浮かべた。
(だめ……)
 振り上げられた拳を視界にとらえ、考えるより先に守るように回された流稀の腕から抜け出そうともがいた。このままでは、流稀に当たってしまう。
 刹那、固いコンクリートにめり込むような音が、物凄い風圧と共に炸裂して叩き付けられた。
 流稀の顔の、すぐ横に。
「貧相なくせにでたらめいってんじゃねえぞ、このアマ!」
 殴ったのは背後のドアだ。それはわかっている。けれど、萎縮した身体は呼吸さえ忘れてしまった。緑がかった銀髪の一筋が、細く光を弾いて落ちていく。
 流稀は全く動いていない。当たることなどあり得ない。あのくらい、かわすことなど造作もない。頭では分かっている。だが、突然晒された暴力に心が千々に乱れて壊れそうだった。
「ふーん。じゃあ何してたの?」
 歯の根が合わないままの沙緒を宥めるように引き寄せて、流稀は淡々と返す。強面の男は舌打ちし、もう一度腕を上げようとしたが、中肉中背の男が止めた。
「おい、やばいぞ。こいつ、どっかで見たことあるなと思ったら、二年の……」
「大宮寺? ……あの大財閥の?」
 こそこそ話を交わして、流稀の顔をまじまじと見つめて数秒。二人は泡を食ったように慌ててその場を離れようとした。しかし流稀が両方の腕を掴んだことで、それは阻止される。おそるおそる振り返る男達に、流稀は満面の笑みをむけた。
「じゃ、行こっか!」
『ドアが開きます、お降りの際はドアの開閉にご注意ください』
 一見華奢な雰囲気を持った青年が、年上の、自分より上背のある男達を難なくホームに引きずり下ろす光景は異様極まりなかった。既に連絡が入っていたのか、鉄道警察と駅員数名が駆け寄ってくる。
『また、××駅との間で線路内立ち入りがありましたので、安全確認の為ーー』
 響き渡るアナウンスの中で立ち尽くす沙緒を、女性駅員が落ちた鞄を取って促すように確認した。
「もう大丈夫ですよ。貴女の荷物はこれだけ? 頷くか、首を振るだけで充分よ」
 頷いて、よろよろとホームに降りる。女性駅員は沙緒を近くのベンチに誘導し、再度了承を取ってからもっていたブランケットを沙緒にかけた。
「先輩……」
「あの男の子のことね。ちゃんとあそこにいるわ」
 迷子のように視線を彷徨わせれば、優しく居場所を教えられる。流稀は、駅の事務室に行くのをごねる男達を鉄道警察へ引き渡そうとしている所だった。
「いだだだだっいだだっ!! ってえ、ふざけんなよっ!」
 無様にわめき続ける男達に、駅員も鉄道警察も呆れ果てる。その中で、唐突に流稀の表情が消えた。
「いいから黙って来いよ、ゴラァッ!!」
 鋭い一喝が響き渡り、痴漢だけでなく周囲も、時さえも、凍りつく。沙緒も呼吸を止めた。
 誰よりも早く我に立ち戻ったのは、場慣れした駅員と鉄道警察である。沙緒の様子を見ながら、たどたどしい言葉を静かに聞いていた女性駅員は立ち上がり、後輩らしき若い女性にその場を任せて流稀達の方へ駆けていく。
 そのまま上司であろう初老の駅員に何事か耳打ちすると、彼はとぼけた眼鏡のズレを直してやんわり口火を切った。
「はいはい。ちょっとねえ、話しようね。君たちの言い分も聞かせて欲しいから、駅員室来ようか」
 そう諭しながら鉄道警察に目配せする。逃げられないように両脇を固められ、男達は歯噛みした。
 強面の男は腹の虫が収まらなかったのか、流稀に向かって吼えたてた。
「金持ちの息子だからって調子のってんじゃねーぞ!!」
「はぁ?」
 沙緒からは後ろ姿しか見えないが、流稀のまとう気配が物騒なものに切り替わったことだけはわかった。
「馬鹿なの? そりゃ強盗とかスリとか万引きとかなら解るよ? 金ねーからやるんだもんね。痴漢に金持ち関係あんの? 何アレ? フーゾクにも行く金ねーって? それともマジで誰にも相手してもらえねーくらい性格悪りーの?」
「すっ、少し触っただけだろーが。犯したわけじゃあるまいし、あのアマが大げさだっつってんだよ!!」
「はああ? じゃあ何? 俺が今ここでテメーの股間蹴り上げても『少し触っただけ』で許されんの? マジで? じゃあいいよね? 使いもんにならなくなっても自己発言の自己責任だもんね」
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