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シュアラ編中心サイト。
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プロフィール
HN:
沙羅の語り部
性別:
女性
自己紹介:
沙羅ノ国。一般的には「シュアラ」の呼称がつかわれている。
帝と巫女姫が執政を行うこの国の、雅で切ない物語。名無しの語り部が語るとしよう。
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 ここでおわりにしたい。だってもう年が変わってしまう(笑)
 さくっと終わらせてしまおう(おいおーい)


「……はぁああああ」
「人の顔見ながらため息つくのやめてくんない。橘」
 即席で作ったくじ箱を生気のない瞳で見つめる少年を足蹴りにしたくなる衝動を抱えながらあきらは言った。
「なんでてめえとペアなんだよ…。どうせなら中村さんとかおしとやかなひとがよかげふっ」
「…屋上いって睡眠薬一杯飲んで飛び降りろ山猿が」
 鳩尾に拳一発。どんな状況でも東海家の拳と日下家の鳩尾は相思相愛である。
「こえええわああ雪路ーっなんでなんで俺はいやだあああーっ」
「はいはい。つまってるから後ろに行って。…これで最後か」
「みんなーペアは全員居るー?」
 クラスメートは全部で偶数だから、誰かが余ることはない。はーいと浮足立った返事が返ってくる。
 あきらはげんなりした。よりにもよって橘と。橘と。雪路に少々行きすぎた友情をもつ日下家長子は苦手だ。もう存在が無理だ。
「時間差出発で、10分毎ね。聖堂に置いてある自分たちの名札とってきてこっちに戻ってくる。脅かし役はとくにいない。大丈夫かな?」
「だいじょうぶでーすっ」
 雪路大好き隊(クラスの女子の半数)が元気に応える。雪路は麗しい微笑みで持ってそれにこたえた。途端に女子の黄色い声が旧校舎の壁に反響する。はいはい青春真っ盛りですねこのやろー。
 ふと雪路と話している女子生徒が目に入った。ん?顔が暗くてよく見えない。誰だっけ?

「クラスいいーん。もう出発していいー?」
「あ、はーい。気を付けてー」

 第一組がスタート。そのまま順調に次々とクラスメートが旧校舎から森の闇に消えていく。
 一番最後のあきらはぼおっと木によりかかって、帰ってきた生徒チェックをしていた。
 そんなあきらの肩を親友のひかりが叩く。顔をあげると、顔を真っ青にしたひかりが自分を見ていた。
「…どうかしたの?」
「ねえ、あきら……、今日、及川さんが来てないみたいなの…」
「え?」
「いま、携帯に連絡あったのよ。それで、それで…」
 ひかりの顔色がどんどん蒼くなっていく。かたかたと身体を震わせて、ひかりはごくりと唾を飲んだ。
「……どうして、ペアに〝あまり〟がでなかったの……?」
 あきらは眉をひそめた。そうだ。一人欠けていたならペア組みのときにだれかがかならず余ることになる。
 なのに、どうして。

(…まあ、珍しいことじゃないけどね…)
 
 たぶん、幽霊や妖の類がおもしろがって参加してるんだろう。人間に害をなさないなら、別に何もしないが…。
 さてどうしようかと悩んでいるあきらの耳に慌ただしく走ってくる足音が聞こえてくる。

「きら、あきらあきらあきらあきらーーーーっ」
「んぉっちょ、どうした〝神代雪路大好き隊局長宮里〟!!」
 毎回毎回、下を噛みそうになる。だが、本人がこの呼び名以外でなければ反応しないというのだから厄介だ。
 宮里は涙を浮かべてあきらの肩を揺さぶった。その後ろには涙にくれている女子生徒がひーふーみー。まあ若干十名いらっしゃる。
「雪路さまが雪路さまが聖堂でどこぞの女子と抱き合ってたのよー!!!!!」
「はあ…」
「出席簿見せて!! 雪路さまのペアは誰?! 体育館裏秘密の会にまねかなきゃ我慢ならないわっ」
 髪を振り乱して、錯乱している宮里をあやしながら、あきらは嘆息する。
「雪路のぺああ?」 
 まったくどこのどいつだ。みずから毒におかされそうにしているやつは。ため息をふかあくつきたくなるのをこらえながらペアのリストをめくる。
 神代雪路神代雪路…と。あった。
 その横に書いてあるはずの女子の名前に目を映す。だが、そこにはなにも書かれていなかった。
 
(あー………)

 内心しまったと思った。雪路は破邪の力もあるし、退魔の術は大の大人でも二の足を踏むほどのものを獲得している。
 けれど、身体が少し弱い、とのことで霊や妖に直に触れたり触れられたりすると意志に反して邪気を吸い取ってしまうのだ。
 あの馬鹿雪路。

「…めんどくさ…」
「えっなに?! 誰っ!」
「あー、橘、よろしく」
「はっ?!」
 
 準備も何もしてないけど、たぶん大丈夫だろう。あきらは術で簡単に夜目がきくようにして、地を蹴った。

◇ ◇


(まいったなあ…)

 どんどんだるくなる身体をもてあましながら、雪路は虚空を見ていた。腕の中にはしくしくと泣いている女の子の幽霊。さてどうしたものか。無理に引き剥がすのも可哀そう…というか怒らせて怨霊化されると大変面倒くさいことになる。 

『どうしても…いけませんか…?』
 
 涙にぬれた顔が自分を見上げる。雪路は困ったような顔を浮かべた。

「悪いけど、僕はそのひとに面影が似てるってだけで、そのひとじゃないから」
『…っ声までそっくり…っ』

 話が通じない。どうしようかなあ。少し無理やりだけど、神呪で浄化させてもらおうか。
 めまいもひどくなってきたし、ここらで潮時だと、雪路は目を閉じて、手で印を組んだ。
 その一瞬前に、玲瓏とした声がひびく。

「心のみありく見目はおろかなり。あはれなりけりやいとほしかなし」

 しゃりん。と水がはじける音。少し離れたところにたった少女が、細い鎖に繋がれた真円の輪をこちらになげる。
 その輪が触れる寸前、霊の姿はかききえた。
 
「なになされるがままになってんのよ」
「あ。あきら、遅かったね。ありがとう」

 ぶちん。

「何が遅かったね、だっ!!」
「もう少しで、彼女にキスしなきゃいけないとこだった」
 流石につかれたのか雪路はぺたりと地面に座り込む。あきらは白い息を吐きながらまくしたてた。
「はいっ?! もうっんなこと早くすれば解放されたのにっ馬鹿じゃないの!」
 雪路はきょとんとしてから青白い顔で返した。
「嫌だよ」
「なんでっ」

「あきらとじゃなきゃ嫌だ」

 ぴし。とあきらが怒鳴っている体勢のまま固まった。それをいいことに雪路は腕をのばしてあきらの肩を引き寄せる。放心状態のあきらはたやすく雪路の腕の中に倒れ込んだ。

「……さすがに、つかれた。ごめん、霊力、分けて」

 唇が、重なる。あきらはぎょっと我に返ってじたばたと抗ったが、雪路は離さない。
 耳まで真っ赤に染めてぎゅっと目をつむっているあきらの髪を、雪路は愛しそうに撫でた。


 クラスメートが探しに来て、雪路があきらから離れた後、
 雪路が平手打ちを受けることになるのはまもなくのことである。


 fin.
 ゆっきーは結構わがまま王子。
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